ドクター谷口の「セイフティ・セックス講座」
日本人はフェラチオ好き(2)危険なフェラチオ
さて、愛し合うカップルが、あらかじめお互いに性感染症に罹患していないことを確認した上でコンドームなしのフェラチオをおこなうことにはまったく問題がないと思われますが、相手が何か感染症を持っているかもしれないとき、あるいは不特定多数を相手とするセックスワークをおこなっている女性(男性も)がコンドームなしのフェラチオをおこなえば危険が伴います。
日本でもフェラチオでのHIV感染は非常に稀ながらもありますし、他の性感染症も感染しうることはよく知られています。おそらく代表的なのが淋病とクラミジアでしょう。しかし、これらは「治る病気」ですし、普通は重症化しません。淋病やクラミジアが子宮けい部(子宮の入り口)に感染した場合、早期に治療を開始しなければ、ときにおなかの奥の方にまで菌が侵入し、腹痛がおこり、場合によっては入院や手術ということもありえます。しかしながら、のどの感染であれば、命にかかわるような状態になることは、普通はありません。
フェラチオでの感染で最も危惧すべきなのはおそらく「B型肝炎」でしょう。B型肝炎ウイルスはHIVなどとは異なり、感染力が極めて強いのが特徴です。実際に(日本の)セックスワーカーのなかにも、客からフェラチオでB型肝炎に感染し入院したという女性は、ものすごく多いというわけではありませんが珍しくはありません。
そして、B型肝炎ウイルスはときに「死に至る病」となります。急性肝炎をおこせば、かなりの確率で入院しなければなりませんし、もしも急性肝炎が劇症肝炎と呼ばれる状態に移行すれば、致死率はかなりのものとなります。急性肝炎の状態から回復して元気になったとしても、何割かはウイルスが消えずに体内に残ることになります。そしてこうなればかなり長期にわたって(あるいは生涯)、強い薬を飲まなくてはなりません。そして、今度は「フェラチオを含む性的接触で他人にB型肝炎ウイルスをうつしてしまうかもしれない」という状態になります。(したがってB型肝炎はなんとしても防がなければならない感染症ですが、ワクチンを打っておけば感染することはありません。これについては機会を改めてお話したいと思います)
淋病、クラミジア、B型肝炎ウイルス以外にも、梅毒やヘルペスなども、コンドームなしのフェラチオで感染することがあります。
さて、フェラチオで性感染症のリスクがあることが分かったとしても、セックスワーカーのなかには、「それは分かるけど現実はコンドームなんてできないし・・・」と考えている人もいるでしょう。
理想論を言っているだけでは仕方がないので、コンドームなしのフェラチオをせざるを得ないときの対処について考えていきましょう。
まず、男性(顧客)には、接客の前にトイレに行ってもらうのがいいでしょう。淋菌やクラミジアは尿道に棲息していますから、排尿をすればかなりの菌が尿と一緒にでていきます。その次に考えるべきことは、できるだけ喉の奥にペニスを入れないことです。よく言われるように、射精の前に分泌される透明の分泌液(カウパー腺液)にも病原体は含まれています。
そして、射精はできれば口腔外にさせるべきですが、それが無理でも、できる限り舌や歯を使って、精液が喉にいくのを防ぐようにしなければなりません。そしてその後は「うがい」です。
実は「うがい」については多くの人がある誤解をしています。次回はそのあたりについて考えていくことにしましょう。
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日本人はフェラチオ好き(1)タイと日本のフェラチオ事情
以前、地元の研究者や保健師らと共に、タイのある地方都市の置屋を訪問しセックスワーカーにインタビューしていたときの話・・・。
地方から出稼ぎに来ているという19歳のセックスワーカーは(タイでは地方から地方にセックスワーカーとして出稼ぎにでることが多い)、私が日本人だとわかるとニッコリと笑みを浮かべてこう言いました。
「日本人はほんとにフェラチオが好きね。それもほとんどの日本人はコンドームをしたがらないわよ・・・」
何と答えていいか分からずに呆然とするしかなかった私に、彼女は、私が彼女のタイ語を理解していないと思ったのか、はにかみながらも口をあけてフェラチオをするポーズをとりました。そんな思い切ったポーズをとった後、やはり恥ずかしかったのでしょう。真っ赤になった顔を両手で覆い、恥ずかしさを紛らわすために笑い出しました。
私が二の句を告げずにいたのは、彼女のタイ語が分からなかったのではなく、このような外国人がほとんどいない地方都市に日本人が買春のためにやって来ているということにまず驚いたのです。その次に、初対面の女性にこんなことを言われてどう答えていいのか分からなかったのです。おそらく、彼女がすぐに恥ずかしく感じたのも、私が彼女の「客」ではなく「普通の日本人」だということを思い出したからでしょう。
彼女と彼女の同僚のセックスワーカーは、口をそろえて日本人はフェラチオ好きだと言います。彼女らによると、フェラチオには国民性があるらしく、中東人はオーラルセックスを(フェラチオだけでなくクンニリングスも)まったくしないそうです。西洋人は人によると言います。タイ人やマレーシア人の場合は、日本のアダルトビデオが好きな男はフェラチオを求めてくるそうです。
しかし、フェラチオのときにコンドームをしたがらないのは彼女らによると日本人だけだと言います。
私が、日本のセックスワーカーの多くはコンドームなしのフェラチオをさせられている、という話をしたところ、彼女らは真剣な顔をして、「それは危険すぎるわ。日本人の女の子がかわいそう・・・」と言いました。私からすれば、両親を助けるために1回の価格がわずか900円ほどで(その半分が彼女らの手取り)、売春を半ば強要されている彼女らが日本人のセックスワーカーに同情しているその様子に、不思議な感覚を抱きました。
以前、私が主宰するNPO法人GINA(ジーナ) が、バンコク、パタヤ、プーケットで活動するフリー(個人営業)のセックスワーカーに調査をしたことがあるのですが、そのなかで200人のセックスワーカーに「フェラチオでHIVに感染するか」という質問をしました。
その結果、全体の85%のセックスワーカーが「する」と答えています。これはもちろん正解で、非常に稀ではありますが、フェラチオでもHIVに感染することはあります。タイでは、フェラチオを含めたオーラルセックスの感染が少なくないと言われていますし、日本にもフェラチオでHIVに感染したセックスワーカーの事例があります。(これについては拙書『今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ』 でもとりあげています)
つまり、タイのセックスワーカーの多くは、「コンドームなしのフェラチオは危険」ということが分かっていて、仕事上フェラチオをせざるを得ないときには当然のこととしてコンドームを用いるのです。
しかし、日本人男性の顧客が「フェラチオはコンドームなしが当然」と考えており、さらに日本人のセックスワーカーも、(おそらく不本意に)コンドームなしのフェラチオを強制されているというわけです。
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お役立ちコラム目次
クラミジアという感染症は、性感染症のなかで男女とも最も多いのではないかと思われます。
●C型肝炎の検査を受けましょう
C型肝炎ウイルス(以下HCV)に感染している日本人は少なくて100万人、多ければ200万人以上にもなると言われています。感染経路で最も多いのが、輸血や血液製剤であろうことは間違いないと思われます。
●少しずつ注目され始めたHTLV-1
HTLV-1というウイルスをご存知でしょうか。このウイルスを持っているのは日本人に多く、母子感染以外にも性感染や血液感染があり、治療法が確立しておらず、ときに致死的な状態になる大変重要な感染症であるのですが、医療従事者以外には意外に知られていないように思われます。
●危険なアナルセックス~A型肝炎編~
今回お話するのはA型肝炎ウイルスです。A型肝炎ウイルス(以下HAV)も、アメーバ赤痢と同様、便→口という感染ルートをとります。つまり、相手の肛門を愛撫して病原体が口の中に入ることによって感染、あるいは相手の肛門を指で触り、その指についた病原体が相手の身体や性器について、それを愛撫することによって感染、というルートです。
●危険なアナルセックス~赤痢アメーバ編~
アナルセックスというのは、やり方にもよるのですが、腟交渉や口腔性交に比べると性感染症のリスクが上がることが多いと言えます。HIVもC型肝炎ウイルス(HCV)も、コンドームなしのアナルセックスをおこなうとリスクが上がりますし、淋菌やクラミジアが肛門感染すると、ときに難治性になることもあります。
●臭いが気になればトリコモナスかも・・・
おりもの(帯下)の臭いが気になって・・・、という訴えでクリニックを受診する人は少なくありません。そんな人のなかで、トリコモナスに感染している人がときどきいます。今回は、そのトリコモナスについてお話したいのですが、まずは「おりものの臭い」について考えていきましょう。
●子宮頚ガンとHPVワクチン
それは私がある医療機関で研修を受けていた頃の話・・・。 30代後半の女性(仮にRさんとしておきます)は、子宮頚ガンの末期で、痛みをとったり精神的なケアをしたりする以外には治療がないような状態でした。幸い、ご主人やお姉さんはケアに熱心で、Rさんの精神状態は我々医療従事者がみる限り安定しているように感じられました。
●毛じらみは自分でみつけましょう!
陰毛のあたりが痒いんです。毛じらみが心配です...。 このような悩みをお持ちでクリニックを受診される方がおられます。
●カンジダをきたす3つの要因
性感染症について書物やインターネットを使って調べると、必ず「カンジダ」という文字がでてきます。けれども、「カンジダ」が実際に性感染症である場合というのは、私の印象で言えばごくわずかです。
●いわゆる"雑菌"の病気
少し前に次のような患者さん(以下Aさん)が来られました。「先生、あたし、おりものの臭いが気になったんで、また先生にみてもらおうと思ったんですけど、最近忙しくて時間がなかったんで、自宅で検査ができるキットっていうもので検査したんです...
●悩ましき尖圭コンジローマ
この病気ってほんとに精神的にしんどくなりますね・・・
こんなに時間がかかる病気とは知りませんでした・・・
あたしはいつになったら再発の不安から解放されるのでしょうか・・・
これら3つの声は、いずれも尖圭(せんけい)コンジローマに罹患した患者さんのものです。
●淋病の治療が変わります!
淋病(りんびょう)というのは、ありふれた病気ではあるのですが、ときに治療に困ることがあります。 しかし、新薬の登場で比較的簡単に治る感染症となることが期待できるかもしれません。
●性器ヘルペスに悩まないで!
【症例 Aさん(29歳女性)】
3日前から外陰部にピリピリとした痛みがあります。何かにかぶれたのかなと思って放っておくと、昨日はすごく身体がだるくなり微熱もあるような気がしました...
●増え続ける梅毒
梅毒というと「過去の病気」というイメージがないでしょうか。 過去には世界中で大流行し、感染から10年以上の月日を経て精神症状や脳神経症状も発症することのある大変恐ろしい病気でしたが、抗生物質の普及により、今では完全に治る病気になっています。
●本当に怖いB型肝炎
最近はHIVに対する関心が高まってきたようで、私が院長をつとめる太融寺町谷口医院にも毎日のように「HIV感染が心配で・・・」というような方が来院されます。
●日本人はフェラチオ好き
以前、地元の研究者や保健師らと共に、タイのある地方都市の置屋を訪問しセックスワーカーにインタビューしていたときの話。地方から出稼ぎに来ているという19歳のセックスワーカーは(タイでは地方から地方にセックスワーカーとして出稼ぎにでることが多い)、私が日本人だとわかるとニッコリと笑みを浮かべてこう言いました...