ドクター谷口の「セイフティ・セックス講座」
悩ましき尖圭コンジローマ その7(最終回)
ベセルナクリームが登場してからは、他の塗り薬が使われるケースはあまりないと思われますが、他の外用薬についても簡単に紹介しておきます。
抗ガン剤の塗り薬が使用されることがときどきあります。抗ガン剤は、効くときには劇的に効くこともあって、以前は難治性の尖圭コンジローマに試してみることがありました。ただし、保険適用がないためそれなりに高額な治療になることと、副作用のリスクからそれほど積極的に推奨されていたわけではありません。よくある副作用にただれや痛みがあります。ガンに対して使うくらいの薬ですから、こういった副作用は充分ありうるのです。
他の塗り薬としてはポドフィリン溶液、トリクロロ酢酸溶液、ジクロロ酢酸溶液といったいわゆる「腐食剤」があげられます。私の経験としては、ポドフィリン溶液をタイのエイズホスピスでボランティア医師をしていたときによく使いました。当時、その施設にはベセルナクリームも液体窒素も抗ガン剤もなかったからです。ポドフィリン溶液は上手くいけば劇的に治ることもあるのですが、塗布しすぎると皮膚がただれてきてやけどをしたような状態になってしまうため"さじ加減"が非常にむつかしいのが難点です。日本でも使われることがあるかもしれませんが保険適用はありません。
尖圭コンジローマが、初診の時点で、極端に大きかったり、尿道の奥深くにあったり(男性)、あるいは腟の奥や子宮腟部に巨大なものがあって、初めから外科的治療が望ましいと考えられる場合は、入院を前提として病院を紹介するようにしています。(クリニックによっては外来でおこなっているところもあるようです)
外科的治療には、電気焼灼をしたりレーザー切除をしたり、あるいはメスで切り取ることもありますが、いずれも麻酔をすることが前提となります。ごく小さい範囲であれば局所麻酔だけでも可能な場合もありますが、多くの場合は腰椎麻酔が必要となります。静脈麻酔を併用することもあります。ただし、全身麻酔まで必要となることはあまり多くありません。
外科的治療の最大のメリットは、「とりあえずは一度の治療で治る」、ということです。液体窒素療法やベセルナクリームでは一度で治ることはあまりなく、多くは週に一度か2週に一度程度受診してもらうことになります。ですから、一気に治してしまいたい、という場合には外科的治療が最適といえるかもしれません。
「とりあえずは一度の治療で治る」というのは、治るのは治るのですが、再発の可能性はあります。もっとも、ある程度の時間をかけて液体窒素療法やベセルナクリームで治した場合でも、再発の可能性はあります。外科的治療をおこなった場合、症例にもよりますが、傷跡が残ることがあり、再発して再び外科的治療をしてまた傷跡が残って・・・、となってしまうと見た目に悪くなってしまうことがあります。一方、液体窒素療法やベセルナクリームの場合は、普通は「跡形もなく治る」わけで、この点においては、外科的治療は少し分が悪いかもしれません。
尖圭コンジローマの最もやっかいな点は「再発」であると言えます。何度もクリニックに通って液体窒素療法の治療を受け、あるいは自宅でベセルナクリームを塗布して洗い流して、やっと治ったと思っても、再発の可能性があるのです。これは、外科的治療をおこなった場合でも同様です。特に入院をした場合は、入院の保証人を立てなければならないのが普通ですから、あまり人に知られたくない病気を両親などに話すことになるわけで、そこまでたいへんな思いをしたのに再発・・・となると、精神的にしんどく感じる人もいます。
どれくらいの割合で再発するかについては、私の経験で言えば、だいたい3割くらいの人は再発します。再発するとすれば1から2ヶ月くらいの間に起こることが多いのですが、なかには半年ほどたってから再発するという場合もあります。症例によっては、数年後に再発という場合もあるようです。(ただし新たに感染したという可能性もあるかもしれません)
男性は再発したかどうかは自分で分かりますが、女性の場合はたいへんです。腟内は自分で診察することができませんから、何の症状もなくても治癒してから数ヶ月の間は医療機関を受診しなければならないのです。
ただし、再発したとしても、また同じ治療を繰り返し、再発すればすぐに治してまた再発すればすぐに治して・・・、ということを続けていればそのうち再発しなくなります。尖圭コンジローマの再発に何年も苦しんでいる、という患者さんを私はみたことがありません。
ですから、精神的にしんどくなるかもしれませんが、「時間がかかることはあるけれども治る病気なんだ」ということをしっかりと認識して、あまり悲観的にならないようにすることが大切です。
最後に尖圭コンジローマについてまとめておきましょう。
①HPVというウイルスによる感染症で皮膚と皮膚の接触で感染しうる。 ②コンドームで完全に防ぐことができない。 ③疑えばまずは医療機関を受診することが大切。放っておけば(稀ではあるが)ガン化する可能性も。また見た目は尖圭コンジローマと同じような腫瘍で悪性のものもある。 ④治療は液体窒素療法とベセルナクリームが中心。また外科的治療もある。 ⑤もっともやっかいなのは再発が多いということ。治癒しても数ヶ月の間は注意深い観察が必要。 ⑥再発は多いが必ず治る病気である。治療はときに長引くし精神的にしんどくなることもあるが諦めないこと!!
抗ガン剤の塗り薬が使用されることがときどきあります。抗ガン剤は、効くときには劇的に効くこともあって、以前は難治性の尖圭コンジローマに試してみることがありました。ただし、保険適用がないためそれなりに高額な治療になることと、副作用のリスクからそれほど積極的に推奨されていたわけではありません。よくある副作用にただれや痛みがあります。ガンに対して使うくらいの薬ですから、こういった副作用は充分ありうるのです。
他の塗り薬としてはポドフィリン溶液、トリクロロ酢酸溶液、ジクロロ酢酸溶液といったいわゆる「腐食剤」があげられます。私の経験としては、ポドフィリン溶液をタイのエイズホスピスでボランティア医師をしていたときによく使いました。当時、その施設にはベセルナクリームも液体窒素も抗ガン剤もなかったからです。ポドフィリン溶液は上手くいけば劇的に治ることもあるのですが、塗布しすぎると皮膚がただれてきてやけどをしたような状態になってしまうため"さじ加減"が非常にむつかしいのが難点です。日本でも使われることがあるかもしれませんが保険適用はありません。
尖圭コンジローマが、初診の時点で、極端に大きかったり、尿道の奥深くにあったり(男性)、あるいは腟の奥や子宮腟部に巨大なものがあって、初めから外科的治療が望ましいと考えられる場合は、入院を前提として病院を紹介するようにしています。(クリニックによっては外来でおこなっているところもあるようです)
外科的治療には、電気焼灼をしたりレーザー切除をしたり、あるいはメスで切り取ることもありますが、いずれも麻酔をすることが前提となります。ごく小さい範囲であれば局所麻酔だけでも可能な場合もありますが、多くの場合は腰椎麻酔が必要となります。静脈麻酔を併用することもあります。ただし、全身麻酔まで必要となることはあまり多くありません。
外科的治療の最大のメリットは、「とりあえずは一度の治療で治る」、ということです。液体窒素療法やベセルナクリームでは一度で治ることはあまりなく、多くは週に一度か2週に一度程度受診してもらうことになります。ですから、一気に治してしまいたい、という場合には外科的治療が最適といえるかもしれません。
「とりあえずは一度の治療で治る」というのは、治るのは治るのですが、再発の可能性はあります。もっとも、ある程度の時間をかけて液体窒素療法やベセルナクリームで治した場合でも、再発の可能性はあります。外科的治療をおこなった場合、症例にもよりますが、傷跡が残ることがあり、再発して再び外科的治療をしてまた傷跡が残って・・・、となってしまうと見た目に悪くなってしまうことがあります。一方、液体窒素療法やベセルナクリームの場合は、普通は「跡形もなく治る」わけで、この点においては、外科的治療は少し分が悪いかもしれません。
尖圭コンジローマの最もやっかいな点は「再発」であると言えます。何度もクリニックに通って液体窒素療法の治療を受け、あるいは自宅でベセルナクリームを塗布して洗い流して、やっと治ったと思っても、再発の可能性があるのです。これは、外科的治療をおこなった場合でも同様です。特に入院をした場合は、入院の保証人を立てなければならないのが普通ですから、あまり人に知られたくない病気を両親などに話すことになるわけで、そこまでたいへんな思いをしたのに再発・・・となると、精神的にしんどく感じる人もいます。
どれくらいの割合で再発するかについては、私の経験で言えば、だいたい3割くらいの人は再発します。再発するとすれば1から2ヶ月くらいの間に起こることが多いのですが、なかには半年ほどたってから再発するという場合もあります。症例によっては、数年後に再発という場合もあるようです。(ただし新たに感染したという可能性もあるかもしれません)
男性は再発したかどうかは自分で分かりますが、女性の場合はたいへんです。腟内は自分で診察することができませんから、何の症状もなくても治癒してから数ヶ月の間は医療機関を受診しなければならないのです。
ただし、再発したとしても、また同じ治療を繰り返し、再発すればすぐに治してまた再発すればすぐに治して・・・、ということを続けていればそのうち再発しなくなります。尖圭コンジローマの再発に何年も苦しんでいる、という患者さんを私はみたことがありません。
ですから、精神的にしんどくなるかもしれませんが、「時間がかかることはあるけれども治る病気なんだ」ということをしっかりと認識して、あまり悲観的にならないようにすることが大切です。
最後に尖圭コンジローマについてまとめておきましょう。
①HPVというウイルスによる感染症で皮膚と皮膚の接触で感染しうる。 ②コンドームで完全に防ぐことができない。 ③疑えばまずは医療機関を受診することが大切。放っておけば(稀ではあるが)ガン化する可能性も。また見た目は尖圭コンジローマと同じような腫瘍で悪性のものもある。 ④治療は液体窒素療法とベセルナクリームが中心。また外科的治療もある。 ⑤もっともやっかいなのは再発が多いということ。治癒しても数ヶ月の間は注意深い観察が必要。 ⑥再発は多いが必ず治る病気である。治療はときに長引くし精神的にしんどくなることもあるが諦めないこと!!
悩ましき尖圭コンジローマ その6
尖圭コンジローマの治療にはいろいろあります。最も一般的なのは液体窒素の塗布です。これはマイスス196度の液体窒素を、綿棒などを使って尖圭コンジローマに塗布するというものです。手足や身体にできるイボ(正式には「尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)」と呼びます)におこなう治療と同じものです。
なぜ、液体窒素を塗布するとイボが消失するかについてきちんと説明しようと思えばかなり複雑な機序になるのですが、簡単に言えば、マイナス196度の冷凍刺激でウイルス(HPV)を含んだ細胞を死滅させる、ということになります。窒素がウイルスそのものをやっつけるわけではありません。
液体窒素療法の利点は、まず保険適用があり値段が安いこと、多少の痛みは伴うことがありますが麻酔を要するほどではないこと、きつく塗布しすぎると痛みが残ったり赤く腫れたりすることがないわけではありませんがこれらの副作用(副反応)はそれほど重症でないこと、ほとんどどの部位にでもおこなうことができること、などが挙げられます。(後述するように、尖圭コンジローマの特効薬として注目を集めているベセルナクリーム(一般名はImiquimod)は粘膜病変には使用できません)
液体窒素療法は、男性であれば、陰茎、陰嚢、肛門周囲、尿道の先端など、どこにでも使うことができますが、綿棒が届かないほどの尿道の奥には用いることができません。女性の場合は、外陰部、会陰部(肛門と腟の間の部分)、肛門周囲、腟の入り口付近などには問題なく使えますが、腟の奥や子宮腟部(子宮の入り口付近)では、おこなうのが少し困難になる場合があります。小さい病変であれば、クスコ(腟を広げる器械)を挿入し視野を確保した状態で液体窒素を塗布できますが、あまりに大きければ初めから入院を前提として外科的切除を検討することになります。
液体窒素療法は何回くらいおこなえば治癒するかについては、大きさや数、できた部位にもより一概には言えません。小さければ、一度の液体窒素療法だけで、他の治療を併用することなく治ります。大きければ、週に一度程度おこなうとして、1ヶ月から3ヶ月くらいかかることもあります。あるいはそれ以上かかることもありますが、効果に乏しい場合は他の治療との併用、あるいは外科的治療を考えます。
2007年末に登場したベセルナクリームという塗り薬は尖圭コンジローマの特効薬として注目されています。後述しますが、尖圭コンジローマの外用薬は、これまでないことはなかったのですが、いずれも保険適用がなく、またそれなりに副作用を覚悟しなければならないものがほとんどでした。
しかし、ベセルナクリームは日本でも保険適用で使える薬として認可され、実際に高い臨床効果を上げています。私自身もこれまで多くの患者さん(100人以上)に処方しており、高い効果を実感しています。ただ、この薬は使用方法にそれなりの注意が必要です。
まず、毎日使うことはできません。週に3回のペースで塗布します。通常は寝る前に塗布して起床時に洗い流します。これは面倒かもしれませんが、きちんと洗い流さないと皮膚が痛くなったり赤く腫れあがったり、もっと重症化するとただれてくることもありますから、しっかりと洗い流す作業は忘れてはいけません。ときどき、尖圭コンジローマを早く治したいという気持ちから、わざと洗い流さないようにする人がいますがこれは危険です。
週に3回のペース、数時間後に洗い流す、というルールを守っていたとしても、赤みや痛みといった副作用が出ることがあります。こうなれば使用を継続するわけにはいかず、ベセルナクリームは以後使えない、ということになります。ただ、実際には、洗い流すまでの時間を短くする、塗布する量を少なくする、などして、しばらく休薬した後にあらためて使うこともあります。多少の副作用を覚悟してでも使用を再開したいと患者さんの方が考えるくらいですから、この薬の効果はかなり高いと言えるでしょう。
ベセルナクリームは粘膜病変に使えないという欠点があります。男性であれば尿道には使用できません。女性の場合は、使える部位が外陰部(だいたい大陰唇の外側くらいと考えればいいでしょう)や会陰部、肛門周囲には使えますが、腟の入り口や腟内には使用することができません。
液体窒素療法もベセルナクリームも、保険適用があって、なおかつそれなりに高い効果が期待できますから、これらを併用することもあります。(ただし症例によっては併用は保険が認められないことがあります)
<続きはコチラ>
なぜ、液体窒素を塗布するとイボが消失するかについてきちんと説明しようと思えばかなり複雑な機序になるのですが、簡単に言えば、マイナス196度の冷凍刺激でウイルス(HPV)を含んだ細胞を死滅させる、ということになります。窒素がウイルスそのものをやっつけるわけではありません。
液体窒素療法の利点は、まず保険適用があり値段が安いこと、多少の痛みは伴うことがありますが麻酔を要するほどではないこと、きつく塗布しすぎると痛みが残ったり赤く腫れたりすることがないわけではありませんがこれらの副作用(副反応)はそれほど重症でないこと、ほとんどどの部位にでもおこなうことができること、などが挙げられます。(後述するように、尖圭コンジローマの特効薬として注目を集めているベセルナクリーム(一般名はImiquimod)は粘膜病変には使用できません)
液体窒素療法は、男性であれば、陰茎、陰嚢、肛門周囲、尿道の先端など、どこにでも使うことができますが、綿棒が届かないほどの尿道の奥には用いることができません。女性の場合は、外陰部、会陰部(肛門と腟の間の部分)、肛門周囲、腟の入り口付近などには問題なく使えますが、腟の奥や子宮腟部(子宮の入り口付近)では、おこなうのが少し困難になる場合があります。小さい病変であれば、クスコ(腟を広げる器械)を挿入し視野を確保した状態で液体窒素を塗布できますが、あまりに大きければ初めから入院を前提として外科的切除を検討することになります。
液体窒素療法は何回くらいおこなえば治癒するかについては、大きさや数、できた部位にもより一概には言えません。小さければ、一度の液体窒素療法だけで、他の治療を併用することなく治ります。大きければ、週に一度程度おこなうとして、1ヶ月から3ヶ月くらいかかることもあります。あるいはそれ以上かかることもありますが、効果に乏しい場合は他の治療との併用、あるいは外科的治療を考えます。
2007年末に登場したベセルナクリームという塗り薬は尖圭コンジローマの特効薬として注目されています。後述しますが、尖圭コンジローマの外用薬は、これまでないことはなかったのですが、いずれも保険適用がなく、またそれなりに副作用を覚悟しなければならないものがほとんどでした。
しかし、ベセルナクリームは日本でも保険適用で使える薬として認可され、実際に高い臨床効果を上げています。私自身もこれまで多くの患者さん(100人以上)に処方しており、高い効果を実感しています。ただ、この薬は使用方法にそれなりの注意が必要です。
まず、毎日使うことはできません。週に3回のペースで塗布します。通常は寝る前に塗布して起床時に洗い流します。これは面倒かもしれませんが、きちんと洗い流さないと皮膚が痛くなったり赤く腫れあがったり、もっと重症化するとただれてくることもありますから、しっかりと洗い流す作業は忘れてはいけません。ときどき、尖圭コンジローマを早く治したいという気持ちから、わざと洗い流さないようにする人がいますがこれは危険です。
週に3回のペース、数時間後に洗い流す、というルールを守っていたとしても、赤みや痛みといった副作用が出ることがあります。こうなれば使用を継続するわけにはいかず、ベセルナクリームは以後使えない、ということになります。ただ、実際には、洗い流すまでの時間を短くする、塗布する量を少なくする、などして、しばらく休薬した後にあらためて使うこともあります。多少の副作用を覚悟してでも使用を再開したいと患者さんの方が考えるくらいですから、この薬の効果はかなり高いと言えるでしょう。
ベセルナクリームは粘膜病変に使えないという欠点があります。男性であれば尿道には使用できません。女性の場合は、使える部位が外陰部(だいたい大陰唇の外側くらいと考えればいいでしょう)や会陰部、肛門周囲には使えますが、腟の入り口や腟内には使用することができません。
液体窒素療法もベセルナクリームも、保険適用があって、なおかつそれなりに高い効果が期待できますから、これらを併用することもあります。(ただし症例によっては併用は保険が認められないことがあります)
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