ドクター谷口の「セイフティ・セックス講座」
危険なアナルセックス ~赤痢アメーバ編1~
アナルセックスというのは、やり方にもよるのですが、腟交渉や口腔性交に比べると性感染症のリスクが上がることが多いと言えます。HIVもC型肝炎ウイルス(HCV)も、コンドームなしのアナルセックスをおこなうとリスクが上がりますし、淋菌やクラミジアが肛門感染すると、ときに難治性になることもあります。
また、アナルセックスをおこなわなければまず感染しないと考えられている感染症もあります。今回からはそういった感染症についてお話したいと思いますが、具体的な病原体の話に入る前に、アナルセックスそのものについて少し考えてみましょう。
まず、誰もが想像するアナルセックスに、ペニスを女性(または男性)の肛門に挿入するというセックスがあります。この行為をコンドームなしでおこなえば、性感染症のリスクが上がることは容易に想像できますね。
しかし、性感染症の観点からアナルセックスを考えるときにはもう少し広い意味で捉えた方がいいでしょう。狭義のアナルセックスがなかったとしても、相手の肛門粘膜や便に病原体がいたときに、それが結果として自分の体内に侵入すれば感染が成立する可能性があります。
ですから、例えば、「肛門をなめる」「肛門をさわる」という行為でも感染することがあるわけです。肛門を指で触っただけでは病原体が自分の体内に入ってくることはありませんが、その指で相手の性器に触れて、それを愛撫して・・・、とか、あるいは指に小さな傷があってそこから病原体が侵入、といったこともあるかもしれません。
それに、これはあまり想像したくありませんが、相手がトイレの後、きちんと手洗いをしていなくて、肛門にいるはずの病原体が指に付着していて、性行為を通してあなたに感染する、といったこともあるかもしれません。さすがに、これはアナルセックスには入りませんが、性行為の前はお互いよく手を洗うようにしましょう。
さて、具体的な病原体の話にうつりたいと思います。まずは、アメーバ赤痢についてご紹介いたします。
アメーバ赤痢というと、医学の教科書には「男性同性愛者にみられる感染症」と書かれています。しかし、実際には男性同性愛者に限られた感染症ではなく、ストレート(異性愛)の男性や女性に感染していることもまったく珍しくない、というのが私の印象です。
なぜ、ストレートの男性や女性にも感染するのかというと、上に述べたような広い意味の"アナルセックス"があるからです。実際、アメーバ赤痢に感染した人によくよく尋ねてみると、「相手の肛門を愛撫して・・・」という答えが返ってくることが多いのです。
アメーバ赤痢は生物学的には「原虫」に属します(以前お話したトリコモナスも原虫でしたね)。アメーバ赤痢は、大腸内では「栄養型」もしくは「シスト(嚢子)」というかたちで存在しています。「栄養型」「シスト」というと専門的な言葉になりますが、それぞれ自力で動き回る"成虫"とじっとしている"卵"みたいなものを想像してもらって差し支えないと思います。
肛門粘膜や便に付着しているシストが口の中に入ることによって感染がおこります。一方、HIVやC型肝炎ウイルスなどは、肛門粘膜→尿道(もしくは尿道→肛門粘膜)というルートで感染しますから、一言で「アナルセックス」といっても感染経路は病原体によってまったく異なるというわけです。
さて、口の中に入ったシストは胃を経て小腸に到達し、そこでシスト→栄養型となり、細胞分裂を繰り返して仲間を増やし大腸に住み着きます。そして、大腸の粘膜をただれさせ、その結果粘膜から出血が起こり血便となります。この血便は、アメーバ赤痢の特徴として、「イチゴゼリー状の粘血便」と表現されることがあります。
下痢や腹痛を伴うことも多いのですが、高熱がでることはほとんどなく、多くの人は1日にトイレに何度も行かなければならないのは面倒だと感じ、血便を気にはしていますが、重症化しないために、日常生活は普通にしています。したがって医療機関の受診も遅れることが多いと言えます。
赤痢というと、細菌性赤痢の方が有名だと思いますが、こちらは激しい下痢と高熱がでるのが特徴です。細菌性赤痢は性感染症ではなく、多くは海外で不衛生な水や食品から感染します。潜伏期間は数日間と短く、症状は激しいですが、抗生物質の数日間の投薬でほぼ治癒します。
一方、アメーバ赤痢の方は、症状は重症化することはほとんどありませんし、潜伏期間も、早ければ数日で症状が出ますが、長ければ数か月以上となる場合もあり、なかなか診断がつかないケースもあります。アメーバ赤痢を疑ったときに、血液検査で抗体を調べることがありますが、感染から1か月以上経過していても抗体が陽性とならないこともあります。確定診断を得るためには、便のなかの原虫(栄養体とシスト)を顕微鏡で調べるのですが、これが慣れていないとけっこうむつかしいのです。ですから、アメーバ赤痢の可能性が否定できなければ、私は何度も顕微鏡の検査をおこなうようにしています。
<続きはこちら>
また、アナルセックスをおこなわなければまず感染しないと考えられている感染症もあります。今回からはそういった感染症についてお話したいと思いますが、具体的な病原体の話に入る前に、アナルセックスそのものについて少し考えてみましょう。
まず、誰もが想像するアナルセックスに、ペニスを女性(または男性)の肛門に挿入するというセックスがあります。この行為をコンドームなしでおこなえば、性感染症のリスクが上がることは容易に想像できますね。
しかし、性感染症の観点からアナルセックスを考えるときにはもう少し広い意味で捉えた方がいいでしょう。狭義のアナルセックスがなかったとしても、相手の肛門粘膜や便に病原体がいたときに、それが結果として自分の体内に侵入すれば感染が成立する可能性があります。
ですから、例えば、「肛門をなめる」「肛門をさわる」という行為でも感染することがあるわけです。肛門を指で触っただけでは病原体が自分の体内に入ってくることはありませんが、その指で相手の性器に触れて、それを愛撫して・・・、とか、あるいは指に小さな傷があってそこから病原体が侵入、といったこともあるかもしれません。
それに、これはあまり想像したくありませんが、相手がトイレの後、きちんと手洗いをしていなくて、肛門にいるはずの病原体が指に付着していて、性行為を通してあなたに感染する、といったこともあるかもしれません。さすがに、これはアナルセックスには入りませんが、性行為の前はお互いよく手を洗うようにしましょう。
さて、具体的な病原体の話にうつりたいと思います。まずは、アメーバ赤痢についてご紹介いたします。
アメーバ赤痢というと、医学の教科書には「男性同性愛者にみられる感染症」と書かれています。しかし、実際には男性同性愛者に限られた感染症ではなく、ストレート(異性愛)の男性や女性に感染していることもまったく珍しくない、というのが私の印象です。
なぜ、ストレートの男性や女性にも感染するのかというと、上に述べたような広い意味の"アナルセックス"があるからです。実際、アメーバ赤痢に感染した人によくよく尋ねてみると、「相手の肛門を愛撫して・・・」という答えが返ってくることが多いのです。
アメーバ赤痢は生物学的には「原虫」に属します(以前お話したトリコモナスも原虫でしたね)。アメーバ赤痢は、大腸内では「栄養型」もしくは「シスト(嚢子)」というかたちで存在しています。「栄養型」「シスト」というと専門的な言葉になりますが、それぞれ自力で動き回る"成虫"とじっとしている"卵"みたいなものを想像してもらって差し支えないと思います。
肛門粘膜や便に付着しているシストが口の中に入ることによって感染がおこります。一方、HIVやC型肝炎ウイルスなどは、肛門粘膜→尿道(もしくは尿道→肛門粘膜)というルートで感染しますから、一言で「アナルセックス」といっても感染経路は病原体によってまったく異なるというわけです。
さて、口の中に入ったシストは胃を経て小腸に到達し、そこでシスト→栄養型となり、細胞分裂を繰り返して仲間を増やし大腸に住み着きます。そして、大腸の粘膜をただれさせ、その結果粘膜から出血が起こり血便となります。この血便は、アメーバ赤痢の特徴として、「イチゴゼリー状の粘血便」と表現されることがあります。
下痢や腹痛を伴うことも多いのですが、高熱がでることはほとんどなく、多くの人は1日にトイレに何度も行かなければならないのは面倒だと感じ、血便を気にはしていますが、重症化しないために、日常生活は普通にしています。したがって医療機関の受診も遅れることが多いと言えます。
赤痢というと、細菌性赤痢の方が有名だと思いますが、こちらは激しい下痢と高熱がでるのが特徴です。細菌性赤痢は性感染症ではなく、多くは海外で不衛生な水や食品から感染します。潜伏期間は数日間と短く、症状は激しいですが、抗生物質の数日間の投薬でほぼ治癒します。
一方、アメーバ赤痢の方は、症状は重症化することはほとんどありませんし、潜伏期間も、早ければ数日で症状が出ますが、長ければ数か月以上となる場合もあり、なかなか診断がつかないケースもあります。アメーバ赤痢を疑ったときに、血液検査で抗体を調べることがありますが、感染から1か月以上経過していても抗体が陽性とならないこともあります。確定診断を得るためには、便のなかの原虫(栄養体とシスト)を顕微鏡で調べるのですが、これが慣れていないとけっこうむつかしいのです。ですから、アメーバ赤痢の可能性が否定できなければ、私は何度も顕微鏡の検査をおこなうようにしています。
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臭いが気になればトリコモナスかも・・・ その2
トリコモナスの診断はいたって簡単で、おりものを綿棒で採取し、顕微鏡でトリコモナスが動き回っているところを観察します。ただし、感染初期にはなかなか見つけにくいこともありますから、診察時に少しおりものの臭いが気になると思えば、後日改めて診察に来てもらい再度検査をおこなったり、培養検査といって結果がでるまでに数日間かかる検査をおこなったり(ただし培養検査でも感染初期には分からないこともあります)、あるいは、確定診断がつかなくても場合によっては薬を処方したりすることもあります。
クラミジアや淋菌といった細菌感染症は、重症化すれば子宮から腹腔内に入り腹膜炎を起こすことがあります。こうなると、高熱や激しい腹痛に襲われることになり、ときに救急搬送されることもあります。一方、トリコモナスは重症化したとしても、おりものの悪臭が目立つようにはなりますが、腹膜炎を起こしたり入院治療が必要になったりすることはまずありません。
治療はいたって簡単で、トリコモナス用の腟錠もしくは飲み薬を使います。通常は腟錠を1週間から10日間程使ってもらいます。これでほぼ治ります。トリコモナスの薬は、実は多くの細菌も同時に殺してくれるので、腟内の雑菌の大半も死滅します。(ただし、副作用でカンジダが発生することがあります)
私は女性のトリコモナスの患者さんに対して、飲み薬を処方することはあまりないのですが、これは副作用を避けるためです。トリコモナスの飲み薬は非常に効果が高く、腟錠と同様、やはりほとんどの雑菌も殺してくれます。しかし、飲み薬は全身に作用するため腸内の善玉菌も殺しますし、また、副作用として胃のむかつきを訴える人がいます。ただし、何らかの事情で腟錠が使えないという人には飲み薬を飲んでもらいます。
女性の患者さんでトリコモナスの診断がついたときは、原則としてそのパートナーの男性にも受診してもらうようにしていますが、男性のトリコモナスはときに悩まされることがあります。(パートナーが女性であれば同じように検査をして必要があれば治療を開始します)
男性の場合、トリコモナスは尿道や膀胱、前立腺などに潜んでいるのですが、女性に比べると症状が出にくいのが特徴です。ある程度重症化していれば、採取した尿を顕微鏡で観察するとトリコモナスが検出されることもありますし、あるいは尿道分泌物を直接顕微鏡で観察して見つかることもあります。
しかし、感染初期の場合は顕微鏡の検査でも、培養検査でも精度が劣ってしまいます。(女性の場合も、感染初期には検査の精度が多少は劣りますが男性はそれ以上に劣るのです)
「腟トリコモナス症に感染している女性の男性パートナーの4人に3人が、同じくトリコモナスに感染しているが、症状がないために感染していることを知らない・・・」
これは、米国ノースカロライナ大学のセナ博士(Dr.Arlene C.Sena)が、『Clinical Infectious Diseases』という医学誌の2007年1月1日号に発表した論文のなかで述べているコメントです。
セナ博士は、現在医療現場でおこなわれているトリコモナスの検査(顕微鏡で直接観察する方法や培養検査)では、ある程度トリコモナスの量が多くならなければ検知されないと述べ、遺伝子(DNA)検査を用いて研究をおこないました。
研究では、性感染症を診ているクリニックを受診した3,836人の女性にトリコモナスの遺伝子検査をおこない、その結果20.6%が陽性となりました。このうち、540人のトリコモナス陽性の女性と、261人の男性パートナーに対して遺伝子検査をおこなったところ、男性の71.7%が陽性となり、そのうち76.8%はまったく症状がなかったそうです。
これらをまとめると、まず性感染症を気にして受診した女性のおよそ5人に1人がトリコモナスに感染しており、そのパートナーの男性の7割以上がやはり感染しており、感染している男性の大半は無症状ということになります。
性感染症はどれをとっても「必ずパートナーの検査もおこなう!」が基本ですが、トリコモナスも例外ではないというわけです。そして、トリコモナスの場合、従来の検査方法では見逃す可能性もあることをこの研究は示しています。
では、トリコモナスをまとめておきましょう。
1.おりものの異常は自分では分かりにくいこともあるが、以前と比べて臭いがおかしい、と感じたときは感染症にかかっている可能性がある。
2.おりものの臭いが悪化する感染症のひとつにトリコモナスがある。
3.トリコモナスは珍しい感染症ではなく、成人の約5%が罹患しているという報告もある。
4.トリコモナスの主な感染経路は性交渉であるが、浴場などでの感染もある。実際、性交渉が長期間ないのにもかかわらず繰り返し感染する女性もいる。
5.トリコモナスの検査は顕微鏡を用いればその場でできる。しかし感染初期にはなかなか分からないこともある。
6.トリコモナスの検査には培養検査といって数日間をかけておこなう検査もあるが、やはり感染初期には分からないこともある。
7.遺伝子検査(DNA検査)をおこなえば、検査の精度は高くなるが実用化されていない。
8.トリコモナスには特効薬(腟錠もしくは内服薬)があるので治療はむつかしくない。
9.男性は症状が出にくく、感染初期は検査の精度も高くないため、パートナーの女性でトリコモナスが見つかれば、無症状かつ検査陰性でも治療を検討すべきこともある。
クラミジアや淋菌といった細菌感染症は、重症化すれば子宮から腹腔内に入り腹膜炎を起こすことがあります。こうなると、高熱や激しい腹痛に襲われることになり、ときに救急搬送されることもあります。一方、トリコモナスは重症化したとしても、おりものの悪臭が目立つようにはなりますが、腹膜炎を起こしたり入院治療が必要になったりすることはまずありません。
治療はいたって簡単で、トリコモナス用の腟錠もしくは飲み薬を使います。通常は腟錠を1週間から10日間程使ってもらいます。これでほぼ治ります。トリコモナスの薬は、実は多くの細菌も同時に殺してくれるので、腟内の雑菌の大半も死滅します。(ただし、副作用でカンジダが発生することがあります)
私は女性のトリコモナスの患者さんに対して、飲み薬を処方することはあまりないのですが、これは副作用を避けるためです。トリコモナスの飲み薬は非常に効果が高く、腟錠と同様、やはりほとんどの雑菌も殺してくれます。しかし、飲み薬は全身に作用するため腸内の善玉菌も殺しますし、また、副作用として胃のむかつきを訴える人がいます。ただし、何らかの事情で腟錠が使えないという人には飲み薬を飲んでもらいます。
女性の患者さんでトリコモナスの診断がついたときは、原則としてそのパートナーの男性にも受診してもらうようにしていますが、男性のトリコモナスはときに悩まされることがあります。(パートナーが女性であれば同じように検査をして必要があれば治療を開始します)
男性の場合、トリコモナスは尿道や膀胱、前立腺などに潜んでいるのですが、女性に比べると症状が出にくいのが特徴です。ある程度重症化していれば、採取した尿を顕微鏡で観察するとトリコモナスが検出されることもありますし、あるいは尿道分泌物を直接顕微鏡で観察して見つかることもあります。
しかし、感染初期の場合は顕微鏡の検査でも、培養検査でも精度が劣ってしまいます。(女性の場合も、感染初期には検査の精度が多少は劣りますが男性はそれ以上に劣るのです)
「腟トリコモナス症に感染している女性の男性パートナーの4人に3人が、同じくトリコモナスに感染しているが、症状がないために感染していることを知らない・・・」
これは、米国ノースカロライナ大学のセナ博士(Dr.Arlene C.Sena)が、『Clinical Infectious Diseases』という医学誌の2007年1月1日号に発表した論文のなかで述べているコメントです。
セナ博士は、現在医療現場でおこなわれているトリコモナスの検査(顕微鏡で直接観察する方法や培養検査)では、ある程度トリコモナスの量が多くならなければ検知されないと述べ、遺伝子(DNA)検査を用いて研究をおこないました。
研究では、性感染症を診ているクリニックを受診した3,836人の女性にトリコモナスの遺伝子検査をおこない、その結果20.6%が陽性となりました。このうち、540人のトリコモナス陽性の女性と、261人の男性パートナーに対して遺伝子検査をおこなったところ、男性の71.7%が陽性となり、そのうち76.8%はまったく症状がなかったそうです。
これらをまとめると、まず性感染症を気にして受診した女性のおよそ5人に1人がトリコモナスに感染しており、そのパートナーの男性の7割以上がやはり感染しており、感染している男性の大半は無症状ということになります。
性感染症はどれをとっても「必ずパートナーの検査もおこなう!」が基本ですが、トリコモナスも例外ではないというわけです。そして、トリコモナスの場合、従来の検査方法では見逃す可能性もあることをこの研究は示しています。
では、トリコモナスをまとめておきましょう。
1.おりものの異常は自分では分かりにくいこともあるが、以前と比べて臭いがおかしい、と感じたときは感染症にかかっている可能性がある。
2.おりものの臭いが悪化する感染症のひとつにトリコモナスがある。
3.トリコモナスは珍しい感染症ではなく、成人の約5%が罹患しているという報告もある。
4.トリコモナスの主な感染経路は性交渉であるが、浴場などでの感染もある。実際、性交渉が長期間ないのにもかかわらず繰り返し感染する女性もいる。
5.トリコモナスの検査は顕微鏡を用いればその場でできる。しかし感染初期にはなかなか分からないこともある。
6.トリコモナスの検査には培養検査といって数日間をかけておこなう検査もあるが、やはり感染初期には分からないこともある。
7.遺伝子検査(DNA検査)をおこなえば、検査の精度は高くなるが実用化されていない。
8.トリコモナスには特効薬(腟錠もしくは内服薬)があるので治療はむつかしくない。
9.男性は症状が出にくく、感染初期は検査の精度も高くないため、パートナーの女性でトリコモナスが見つかれば、無症状かつ検査陰性でも治療を検討すべきこともある。
臭いが気になればトリコモナスかも・・・ その1
おりもの(帯下)の臭いが気になって・・・、という訴えでクリニックを受診する人は少なくありません。そんな人のなかで、トリコモナスに感染している人がときどきいます。今回は、そのトリコモナスについてお話したいのですが、まずは「おりものの臭い」について考えていきましょう。
臭いというものは主観的なもので、患者さんが気にしている場合でも、実際には正常範囲の臭いという場合も少なくありません。逆に、他覚的にみて(医師が診て)、明らかな悪臭がある場合でも、患者さんは「特に気になりません」と言われることもありますから不思議です。
おりものの臭いは、何も病気がない人でもまったくの無臭ということはありませんし、体調や生理周期によって変化するのが普通です。また、年齢によっても変化しますから、以前と比べて「おりものの臭いが変わった」といって受診する人のなかにも、まったく問題のない場合もあります。正常なおりものの臭いは、少し酸っぱいような香りがします。これは、正常な腟内の状態は酸性であるためだと思われます。
おりものの正体は、子宮や膣の粘膜が新陳代謝ではがれたものや分泌物などが合わさったものと考えていいと思います。ときどき、「おりものがでてきて・・・」というだけで受診される人がいますが、まったくおりもののない人というのもあまりおらず、ほとんどの人は自分で確認できるくらいのおりものがあります。
おりものは、膣の粘膜を湿った状態にする役割をしています。これは、老廃物を外に出すために有用ですし、外部から侵入する雑菌や病原菌の浸入を防ぐ役割も果たしていますから、ある程度は必要なものなのです。また、酸性であるのは外部から侵入した雑菌の増殖を防ぐのに効果があります。
おりものの量については、個人差が非常に大きいと言えます。ほとんど出ない人もいれば、多いときは1日に何度もおりものシートを交換しなければならないという人もいます。量が多ければそれだけで異常というわけでは決してありません。一方、「量」に対し、「臭い」の異常は、なにか病気になっている可能性があると言えます。
当たり前のことですが、おりものというのはなかなか他人のものとは比べることができません。ですから、どのような臭いが正常なのか異常なのか、なかなか見分けがつきにくいかもしれません。ひとつ、おすすめしたいのは、日頃からときどき自分のおりものをチェックして臭いに変化がないかどうか(イヤな臭いに変化していないかどうか)を確認するという方法です。
おりものが以前に比べておかしな臭いがする・・・。このように感じるなら医療機関を受診すべきかもしれません。臭いに異常をきたす(悪臭がする)感染症というのは、いろいろあって、クラミジアや淋病も重症化すればおりものの臭いが悪臭となりますし、以前お伝えした「雑菌」による腟炎や子宮頚管炎でも悪臭が伴うことがあります。腟の奥に尖圭コンジローマができてそれが悪臭の原因だった、ということもありますし、子宮頚ガンは進行すると悪臭を放ちます。
このようにおりものの臭いが悪化する原因はいろいろとあるのですが、日常の診察の現場で、おりものの悪臭があったとき、必ず疑わなければならない感染症がトリコモナス腟炎です。
トリコモナスは生物学的には「原虫」に属します。この「原虫」を患者さんに説明するのはときにむつかしくて悩むことがあります。「トリコモナスって虫なのですか?」と聞かれることもありますが、「虫」というと患者さんによってイメージするものが異なるので、安易に「はい、虫の一種です」と答えるわけにもいきません。
少し学術的な説明をすると、「原虫」とは単細胞の微生物で、自身で動くことのできるものを指します。トリコモナスの場合、鞭毛(べんもう)と呼ばれる毛のようなものが体から出ていてそれを動かしておりもののなかで泳ぐことができます。大きさは、大きいものであれば10x20マイクロメートル(ミリメートルの5分の1から10分の1)程度で、肉眼では見えませんが顕微鏡で観察することができます。
私は、トリコモナスの患者さんに対しては、診察室で時間的に余裕があれば、顕微鏡で観察したトリコモナスをモニタにうつして動いているところを見てもらうようにしています。やや重症化していれば、画面中に、鞭毛を使って器用に動き回っているいくつものトリコモナスを見つけることができます。(けっこうカワイイです!)
トリコモナスの感染経路は多くは性感染であろうと言われています。しかし、100%性感染というわけでもありません。教科書的には、浴場での感染や(入院している場合は)院内感染もある、となっています。実際、性交渉が一切ないのにもかかわらず繰り返しトリコモナスに感染する患者さんもいます。そして、トリコモナスという感染症は決して珍しい病気ではなく、教科書には成人の約5%が罹患している、と書かれています。
トリコモナスは感染初期であればほとんど無症状ですが、進行すると(トリコモナスが仲間を増やすと)おりものに異常が現れます。典型例で言えば、少し黄色がかったさらっとしたおりものになり、泡状(泡沫状)になることもあります。そして、このようにおりものに変化があればほとんどはイヤな臭いを放ちます。さらに重症化すると、患者さんが診察室に入ってきただけでもそのイヤな臭いが分かることがあります。これは、医師でなくても異様な臭いが気になるはずですが、不思議なことに本人はそれほどの臭いがあるのにもかかわらずまったく気づいていないこともあります。
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臭いというものは主観的なもので、患者さんが気にしている場合でも、実際には正常範囲の臭いという場合も少なくありません。逆に、他覚的にみて(医師が診て)、明らかな悪臭がある場合でも、患者さんは「特に気になりません」と言われることもありますから不思議です。
おりものの臭いは、何も病気がない人でもまったくの無臭ということはありませんし、体調や生理周期によって変化するのが普通です。また、年齢によっても変化しますから、以前と比べて「おりものの臭いが変わった」といって受診する人のなかにも、まったく問題のない場合もあります。正常なおりものの臭いは、少し酸っぱいような香りがします。これは、正常な腟内の状態は酸性であるためだと思われます。
おりものの正体は、子宮や膣の粘膜が新陳代謝ではがれたものや分泌物などが合わさったものと考えていいと思います。ときどき、「おりものがでてきて・・・」というだけで受診される人がいますが、まったくおりもののない人というのもあまりおらず、ほとんどの人は自分で確認できるくらいのおりものがあります。
おりものは、膣の粘膜を湿った状態にする役割をしています。これは、老廃物を外に出すために有用ですし、外部から侵入する雑菌や病原菌の浸入を防ぐ役割も果たしていますから、ある程度は必要なものなのです。また、酸性であるのは外部から侵入した雑菌の増殖を防ぐのに効果があります。
おりものの量については、個人差が非常に大きいと言えます。ほとんど出ない人もいれば、多いときは1日に何度もおりものシートを交換しなければならないという人もいます。量が多ければそれだけで異常というわけでは決してありません。一方、「量」に対し、「臭い」の異常は、なにか病気になっている可能性があると言えます。
当たり前のことですが、おりものというのはなかなか他人のものとは比べることができません。ですから、どのような臭いが正常なのか異常なのか、なかなか見分けがつきにくいかもしれません。ひとつ、おすすめしたいのは、日頃からときどき自分のおりものをチェックして臭いに変化がないかどうか(イヤな臭いに変化していないかどうか)を確認するという方法です。
おりものが以前に比べておかしな臭いがする・・・。このように感じるなら医療機関を受診すべきかもしれません。臭いに異常をきたす(悪臭がする)感染症というのは、いろいろあって、クラミジアや淋病も重症化すればおりものの臭いが悪臭となりますし、以前お伝えした「雑菌」による腟炎や子宮頚管炎でも悪臭が伴うことがあります。腟の奥に尖圭コンジローマができてそれが悪臭の原因だった、ということもありますし、子宮頚ガンは進行すると悪臭を放ちます。
このようにおりものの臭いが悪化する原因はいろいろとあるのですが、日常の診察の現場で、おりものの悪臭があったとき、必ず疑わなければならない感染症がトリコモナス腟炎です。
トリコモナスは生物学的には「原虫」に属します。この「原虫」を患者さんに説明するのはときにむつかしくて悩むことがあります。「トリコモナスって虫なのですか?」と聞かれることもありますが、「虫」というと患者さんによってイメージするものが異なるので、安易に「はい、虫の一種です」と答えるわけにもいきません。
少し学術的な説明をすると、「原虫」とは単細胞の微生物で、自身で動くことのできるものを指します。トリコモナスの場合、鞭毛(べんもう)と呼ばれる毛のようなものが体から出ていてそれを動かしておりもののなかで泳ぐことができます。大きさは、大きいものであれば10x20マイクロメートル(ミリメートルの5分の1から10分の1)程度で、肉眼では見えませんが顕微鏡で観察することができます。
私は、トリコモナスの患者さんに対しては、診察室で時間的に余裕があれば、顕微鏡で観察したトリコモナスをモニタにうつして動いているところを見てもらうようにしています。やや重症化していれば、画面中に、鞭毛を使って器用に動き回っているいくつものトリコモナスを見つけることができます。(けっこうカワイイです!)
トリコモナスの感染経路は多くは性感染であろうと言われています。しかし、100%性感染というわけでもありません。教科書的には、浴場での感染や(入院している場合は)院内感染もある、となっています。実際、性交渉が一切ないのにもかかわらず繰り返しトリコモナスに感染する患者さんもいます。そして、トリコモナスという感染症は決して珍しい病気ではなく、教科書には成人の約5%が罹患している、と書かれています。
トリコモナスは感染初期であればほとんど無症状ですが、進行すると(トリコモナスが仲間を増やすと)おりものに異常が現れます。典型例で言えば、少し黄色がかったさらっとしたおりものになり、泡状(泡沫状)になることもあります。そして、このようにおりものに変化があればほとんどはイヤな臭いを放ちます。さらに重症化すると、患者さんが診察室に入ってきただけでもそのイヤな臭いが分かることがあります。これは、医師でなくても異様な臭いが気になるはずですが、不思議なことに本人はそれほどの臭いがあるのにもかかわらずまったく気づいていないこともあります。
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