ドクター谷口の「セイフティ・セックス講座」

カンジダをきたす3つの要因 その3

 カンジダをきたす理由として、前回「免疫力の低下」と「抗生物質の使用」についてお話しました。今回は、3つめの理由として「性感染症としてのカンジダ」についてお話します。

 性感染症としてのカンジダを考えるときは、男性→女性、女性→男性を分けて考えた方が分かりやすいでしょう。(男性→男性、女性→女性についても、個別には説明しませんが理屈が分かればどのように感染するかは理解できると思います)

 まず、男性→女性の感染というのはあまり多くはないと思われます。男性のカンジダは「カンジダ性亀頭炎」と言って、ペニスの先端から真ん中くらい(いわゆる"カリ"のあたりに最も多い)にカンジダが生息しているのが普通です。通常この部分はコンドームに覆われますから、コンドームをしての腟交渉であれば普通は感染しません。

「でも、フェラチオや(セックスワークをしている人の)スマタではうつるんじゃないの?」と疑問を感じる人もいるでしょう。

 しかし、通常男性のカンジダというのは初期であっても何らかの症状が出現しているのが普通です。ペニスに発赤があったり(部分的に赤いこともあれば全体が均一に赤くなっていることもあります)、痒みがあったり、あるいはカスのようなものが付着していたりすればカンジダの可能性があります。このような症状があれば、普通は気になりますから性交渉を控えることが多いと思われます。

 けれどもなかには、ペニスがそのような状態であったとしても性交渉をおこなう男性がいるかもしれません。その場合、(可能であれば)女性の方が、性交渉をもつ前にペニスを確認するのがいいでしょう。セックスというのは暗がりでおこなわれることが多いでしょうから、光をあててまじまじと観察することはできないかもしれませんが、それでも何もしないよりはましです。

 口のなかにもカンジダはうつるの?、と聞かれることがあります。通常、免疫力が正常であれば、口腔内のカンジダというのはあまり多くはありません。ただし、ときどきあるのが喘息などの治療でステロイドの吸入薬を使用している場合です。この場合は口腔内の免疫力が落ちていて、少しの侵入でカンジダが異常増殖することがあります。

 ステロイドを使用していないときにもカンジダが口の中や口角に感染することはあり得ますが、もしも気になるなら医療機関を受診すればすぐに診断がつきます。口角がただれていたり、口のなかに白いものがでてきたり、舌が白っぽくなってきたと感じれば、診察を受けるようにすればいいのです。ときどき、カンジダは喉の奥にできていることがありますが、これはエイズなどで極端に免疫力が低下している場合であり、少し疲れている、程度では、咽頭(あるいは食道)にまで広がることは普通ありません。

 次に女性→男性のカンジダ感染を考えてみましょう。男性→女性に比べると、女性→男性のカンジダ感染は起こりやすいと言えます。なぜなら、腟交渉にコンドームを用いたとしても外陰部に存在しているカンジダがペニスの根元に付着することがあり得るからです。そして、性交渉の後、ペニスの根元のカンジダが仲間を増やし、生息しやすい亀頭部の付近にまでやってきて住み着くのです。

 ただし、ここまで来るのには時間がかかりますから、たとえ外陰部に多量のカンジダが生息している女性と性交渉をもったとしても、性交渉の後すぐにペニス全体を洗えば、カンジダ感染が成立することはそれほど多くないと思われます。

 男性でカンジダを発症するのは、(仮性)包茎の人に多いという特徴があります。これは、包皮が亀頭を覆うことによってジメっとした環境ができあがるからです。カンジダはこのような湿潤した場所が大好きなのです。女性の腟にカンジダができやすいのも、あのようなジメっとした環境だからです。

 風俗店に行ってからペニスが痒くなった、と言って医療機関を受診する男性がいます。私が顕微鏡を見て、「これはカンジダですよ」と言うと、「腟交渉はしていないし、フェラチオはコンドームがなかったけど、そんなことでうつるんですか」と質問されることがあります。このようなケースで最も多いのがいわゆる<スマタ>での感染です。おそらく<スマタ>という行為で、ペニスの先端が女性の外陰部に接触した結果、カンジダの性感染が成立したのでしょう。いずれ、詳しく取り上げたいと思いますが、この<スマタ>という行為は、充分注意しないと、女性にとっても男性にとっても大変リスクのある行為となります。

 最後にカンジダの診断について述べておきます。他のほとんどの性感染症と同様、カンジダの診断も数分でつきます。なぜならカンジダは顕微鏡で観察できるからです。(よくある性感染症のなかで、顕微鏡で観察できないのはクラミジアです。ただしクラミジアも専門のキットを用いれば1時間程度で結果がでます)

 下に顕微鏡で観察された実際のカンジダを示しておきます。(左の方に糸クズのようなものが密集してみえるのがカンジダです)

candida2.jpg

 では、カンジダについてまとめておきましょう。

1.カンジダが発症する原因が性交渉であることは多くない。
2.多い理由は、「免疫力の低下」と「抗生物質の使用」である。
3.カンジダの症状として多いのが、かゆみ、痛み、おりものの異常などであるが、初期であれば無症状のことも多い。
4.カンジダは常在菌であり、少しでも生息していれば必ず治療しなければいけないというわけではない。
5.カンジダの診断は簡単で数分で結果がでる。
6.治療は塗り薬と腟錠が中心で飲み薬が必要になることはそれほど多くない。

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プロフィール

医師。NPO法人GINA(ジーナ)代表。
太融寺町谷口医院(11月1日に「すてらめいとクリニック」から名称変更)院長。大阪市立大学医学部非常勤講師。著書に『今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ』(文芸社)など。