ドクター谷口の「セイフティ・セックス講座」

毛じらみは自分でみつけましょう! その1

 陰毛のあたりが痒いんです。毛じらみが心配です...。

 このような悩みをお持ちでクリニックを受診される方がおられます。太融寺町谷口医院の患者さんで言うと月に2~5人くらいがやって来られます。

 診察して毛じらみが見つかると、私はそれを顕微鏡で確認し、モニタにうつしだして患者さんに見てもらうようにしています。毛じらみの成虫が見つからなくても、陰毛に産み付けられた卵が見つかることもあり、患者さんに卵を見てもらうこともあります。

 治療はいたって簡単で、使用上の注意どおりにスミスリンシャンプーと呼ばれる専用のシャンプーを使ってもらえばほとんどは治ります。

 このように、毛じらみは診断もその場ですぐについて、治療も簡単、なのですが、ときになかなか確定診断にいたらないことがあり、少し苦労することもあります。今回は、その毛じらみについて診断のポイント及び治療のコツをお話したいと思います。

 毛じらみにやっかいなことがあるとすれば、それは「診断がつくまでに時間がかかる」ということです。たった今、「診断もその場ですぐについて・・・」と述べましたから、時間がかかる、と言われれば、いったいどっちなの?と思われるでしょうが、診断がつくまでに少し日にちがかかるのです。長ければ感染して2~3か月が過ぎてからようやく痒みが出現し診断にいたるケースもあります。「診断もその場ですぐについて...」というのは、毛じらみの成虫もしくは卵がみつかった場合です。

 いわゆる「潜伏期間」という言葉でもいいかと思いますが、性的接触で毛じらみが感染しても最初は1~数匹程度が陰毛から陰毛にうつるだけですから、この程度ではなかなか症状も出ませんし、診察室で毛じらみの成虫や卵を見つけるのはなかなか困難なのです。

 1週間から長ければ2~3か月程度経過して、毛じらみが仲間を次々に増やすようになって、痒みが増し、ようやく診断にいたるというわけです。ですから、危険な性交渉があって、その翌日から陰毛付近が痒い、という場合は、毛じらみよりもむしろ、湿疹ができていたり、性交渉の際に用いたローションで陰毛付近の皮膚がかぶれていたり、ということの方がずっと多いのです。

 「危険な性交渉」は、ときに後ろめたい思いがあったりしますから、その気持ちが痒みを感じやすくなっているということもあります。

 さて、毛じらみが初期には診察室で診断がつきにくい理由のひとつは、「毛じらみは夜間に活動する」からです。昼間は陰毛の根元付近でじっとしているため、注意深く陰毛の1本1本を確認するようにしてもなかなか見つけることができないことがあるのです。一方、夜間には、毛じらみはノソノソと動き出して皮膚を吸血したり陰毛に卵を産み付けたりしますから、夜間の方が痒みが増します。そのため、毛じらみの初期症状は「夜間に増悪する痒み」であることが多いと言えます。ただし、疥癬(かいせん)や他の痒みを伴う病気の場合にも、痒みは昼間よりも夜間に強くなりますから、これだけで毛じらみを強く疑うというところまではいきません。

 このように「陰毛付近の痒み」があるから毛じらみかなと思って...、という理由で受診されることが多いのですが、別の訴えで受診されることもあります。それは、「パンツにシミがついている」というものです。

 白もしくは薄い色のパンツをはいていなければなかなか分かりにくいのですが、パンツに点々としたシミのようなものがついていて、それが気になり受診され、その原因が毛じらみだったということがときどきあります。

 この"シミ"は実際にはシミではなく血液です。毛じらみが皮膚を吸血するため、皮膚から少量の出血が起こり、それがパンツに付着するのです。患者さんによってはシミではなく血液であることまで見破っている人もいますが、パンツに付いた血液から毛じらみを疑っている人は多くなく、たいがいは「血尿が出た」と言われます。

 それだけ出血があれば痒みは相当なものだろう、と思われますが、意外にも毛じらみは患者さんによっては痒みをほとんど訴えないことがあります。毛じらみの痒みは、教科書的には「かきむしりたいほどの強い痒み」なのですが、実際には、肉眼で毛じらみの成虫がウヨウヨしているような状態でも「痒みはほとんどありません」という人もときどきいますから不思議です。

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プロフィール

医師。NPO法人GINA(ジーナ)代表。
太融寺町谷口医院(11月1日に「すてらめいとクリニック」から名称変更)院長。大阪市立大学医学部非常勤講師。著書に『今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ』(文芸社)など。