熊篠慶彦の「障害者のセクシャリティ」
セックスボランティア 4 現状と今後
2回ほどピンチヒッターを頼んでしまい話がやや前後しますが、今回は「セックスボランティア2(http://www.sexba.jp/column/columnist06/200812170001.php)」の最後に書いた、不安・危険を回避し安心・安全を確保するためのルールやシステム作りの思惑について書こうと思います。
現在、障害者の日常生活に関する支援には障害者自立支援法(または介護保険制度)が適用されます。ざっくりとごくごく簡単に説明すると、サービスに関わる費用の10%を利用者が負担する、というもので、裏を返せば90%は公費負担(税金)でまかなわれているともいえます。
自分を例にとると、週2回、各3時間ずつ身体介護と家事援助をしてもらっています。具体的には、掃除・洗濯・買い物・調理などが家事援助、更衣・入浴・塗り薬を塗ることなどが身体介護となります。しかし公費負担ゆえの細かい規定があり、草花への水やりやペットへ餌を与えること、床のワックスがけなどは身体介護にも家事援助にも含まれません。幸いにも観葉植物はないしペットもいないので特に困ることはないのですが、買い物がてらに郵便物の投函や通帳への記帳などを依頼すると、引き受けてくれるヘルパーさんと引き受けてくれないヘルパーさんがいて、どうもグレーゾーンのようです。
というような現状を踏まえた上で、性的介助をどのように位置づけ、さらに障害者自立支援法の枠内でどのように適用させるのか。障害当事者は何をして欲しくて何をして欲しくないのか。介助者は何が出来て何が出来ないのか。さらに、費用の90%を負担している納税者はどのような内容であれば納得できるのか。などなど、書いているだけで先行きが思いやられることばかりですが、ここはしっかりと腰を据えて議論をし、数年かけてでも関係省庁へ提言できるくらいのルールに仕上げたいと思っています。
で、まずは冷静に、何を以て性的介助とするのか。現行の適用範囲から考えれば、風俗店への往復同行・店内での介助は限りなく黒に近いグレーとなります。生命に関わる(であろう)通院であっても、長時間待たされる場合は介護者に報酬が支払われないケースがあることを考えれば、生命に関わらない一種の娯楽施設である風俗店への同行・介助は認められないでしょう(ヌルヌルクリニックなんていう店名でもです:笑)。アダルトグッズの購入やエロDVDのレンタルもおそらく同様の扱いとなると思いますが、郵便物の開封や電池の交換は依頼する障害者側が恥ずかしくなければギリギリセーフな気がします。
さて、問題はここからです。障害者自立支援法や介護保険制度の適用判定に、自慰が出来るか否か(ましてセックスそれ自体が出来るか否か)、なんていう項目はありません。下半身関連でいうとせいぜいトイレの自立度、入浴時の介助範囲(自分でどこまで洗えてどこから洗えないかなど)が設定されるくらいです。仮にトイレも入浴も全て介助(要介護度5)だとするなら、自慰介助(という名の手コキ)を身体介護に組み込める余地は充分にあると考えています。ただし、同性介助という条件付きになるでしょう。原則として同性介護が基本的なあり方であるということは当然といえば当然で極めて真っ当な話なのですが、現在活動している一部の性的介助を行なう団体(または個人)では大半が異性介助で、場合によっては性風俗営業の届け出をしているところも多く、そういったケースを身体介護へ組み込むことに関して納税者の賛同を得るだけの理論をボクは思い付きません。いや、正確にいえば抜け道的なことはいくつか考えられるし、少なくとも性風俗営業の届け出をしなくても異性介助が可能(になるかもしれないよう)な屁理屈はあります。しかしまだ言えない(笑)。
それはさておき、関係省庁への提言をする際にはおそらくこの同性介助か異性介助かが最大の論点になると予想しますが、多少の個人差、また男女差はあるにせよ、異性によるトイレ・入浴・更衣の介助には羞恥心が働きます。例えば、入浴を強く拒否する認知症の女性は、入浴中に男性介護者が介助に入った日を境に入浴を拒否するようになった、という象徴的なケースがあります。直接的な性的欲求(オナニーしたい、セックスしたい)に対応することはもちろん重要ですが、それ以前の性的な尊厳も守られなければならないと思います。そうすることが安心・安全への第一歩になると考えています。
性急に結論を出すつもりはありません。障害当事者、介助者、また納税者という立場で色々なご意見をお寄せ下さい。
ちなみに、3/20(金・祝)の勉強会から素案作りを始めます。リアルタイムのネット中継もするので遠方の方も積極的にご参加ください。